瀬戸内海にぽつりと浮かぶ小さな島。
波音だけが瀬戸の静寂を包む海岸。
その男は、白い砂浜には似合わないダークスーツ姿で歩きながら、
夏の陽射しを浴びる海を見つめていた。
「こんなに美しい島があったなんて知らなかった。」
ポツリと、しかしちゃんと届くように、こぼした。
歩く先に佇む、ひとりの女性に向けて。
「今は人の手がかなり加わってるけどね。」
赤いワンピースを着た、その女は少しだけ大きな声で答えた。
男はその言葉には応えず続ける。
「美しい島には、必ず美しい女性が育つ。世界の法則だ。」
女は前髪を直しながら、男に目線をやる。
「観光で来たにしては格好が些か暑そうね。何かのビジネスかしら?」
男は答えない。
ただ、女に向かって歩を進める。
「でもこんな小さな島に、何のご用かしら。」
男は答えない。
彼はスーツの内側に手をやり、そっとワルサーPPKを抜く。
構えはしない。右手は下げたまま歩き、そして立ち止まった。
男と女は少しの間、見つめあう。
女は表情を変えずに小さな声で言った。
「あなた、誰?」
男はようやく口を開いた。
「ボンド。
ジェームズ・ボンド。」
「いや思いっきり日本人だし。」
「いやこれはあの、違っ」
波音だけが瀬戸の静寂を包む海岸。
その男は、白い砂浜には似合わないダークスーツ姿で歩きながら、
夏の陽射しを浴びる海を見つめていた。
「こんなに美しい島があったなんて知らなかった。」
ポツリと、しかしちゃんと届くように、こぼした。
歩く先に佇む、ひとりの女性に向けて。
「今は人の手がかなり加わってるけどね。」
赤いワンピースを着た、その女は少しだけ大きな声で答えた。
男はその言葉には応えず続ける。
「美しい島には、必ず美しい女性が育つ。世界の法則だ。」
女は前髪を直しながら、男に目線をやる。
「観光で来たにしては格好が些か暑そうね。何かのビジネスかしら?」
男は答えない。
ただ、女に向かって歩を進める。
「でもこんな小さな島に、何のご用かしら。」
男は答えない。
彼はスーツの内側に手をやり、そっとワルサーPPKを抜く。
構えはしない。右手は下げたまま歩き、そして立ち止まった。
男と女は少しの間、見つめあう。
女は表情を変えずに小さな声で言った。
「あなた、誰?」
男はようやく口を開いた。
「ボンド。
ジェームズ・ボンド。」
「いや思いっきり日本人だし。」
「いやこれはあの、違っ」
- 「ジェームズ・ボンドは来ない」
松岡圭祐著(角川書店)2014.4.2刊
さて、上記に書いたものはオレのフィクションであり、
これからご紹介する小説とは一切関係ありません(笑)。
本日は、プロが描くステキな1冊をみなさんへおすすめしたい。
みなさんは、「直島(なおしま)」という島はもちろんご存じだろう。
去年もこのブログに書いた、「瀬戸内国際芸術祭」のメイン舞台である。
岡山県玉野市の先、ベネッセがアートの島に仕立て上げた、あの島である。
直島が「007」の舞台!?
「映画化や!ロケ誘致や!」
思いつきも甚だしいこの一言が、ベネッセどころか、北海道、大阪、
やがてハリウッド、世界的企業も巻き込む大騒動になっていく。
直島生まれの峰尾遥香(17)は、
その非現実的ともいえる「夢」に想いを馳せた。
果たして、ジェームズ・ボンドは来るのか―。
この話は、実際に直島で起こった「実話」である。
2001年に「007」の小説作家が直島を訪れることから物語は動き出す。
ひとりの女子高生の目線で描かれた、青春と汗と笑いと涙。
小説化したのは、「万能鑑定士Q」でおなじみの松岡圭祐氏。
多少フィクションを織り交ぜつつ、でも、我が玉野市宇野と香川県直島の関係や、
方言なども実にリアルだ。
しかーし!
いくらアート化したとしても、直島と絶対つながらない「007」。
直島の半分以上は、アートされてない素朴な島。
オレの親父はまだ毎日直島で働いているが、007とか笑止。
「ダブルオーセブン」じゃなく、「ゼロゼロセブン」って呼んどる時点で、終わっとる。
でも!
夢みたっていいじゃない!
じいちゃんもばあちゃんも、少女も青年も!
夢みたっていいじゃない!
やってみんと分からんこともあるんじゃで!
そして!
やっぱりオレは、こういう女の子(峰尾遥香)が好きだなあ!
瀬戸内海はええなあ!
瀬戸内ネバーダイ。
そうだ、直島行こう。
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「ハローナウシカ」岡山編。
再開!