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瀬戸内海にぽつりと浮かぶ小さな島。

波音だけが瀬戸の静寂を包む海岸。

その男は、白い砂浜には似合わないダークスーツ姿で歩きながら、


夏の陽射しを浴びる海を見つめていた。


「こんなに美しい島があったなんて知らなかった。」

ポツリと、しかしちゃんと届くように、こぼした。

歩く先に佇む、ひとりの女性に向けて。



「今は人の手がかなり加わってるけどね。」

赤いワンピースを着た、その女は少しだけ大きな声で答えた。



男はその言葉には応えず続ける。

「美しい島には、必ず美しい女性が育つ。世界の法則だ。」



女は前髪を直しながら、男に目線をやる。

「観光で来たにしては格好が些か暑そうね。何かのビジネスかしら?」



男は答えない。

ただ、女に向かって歩を進める。


「でもこんな小さな島に、何のご用かしら。」

男は答えない。

彼はスーツの内側に手をやり、そっとワルサーPPKを抜く。

構えはしない。右手は下げたまま歩き、そして立ち止まった。


男と女は少しの間、見つめあう。

女は表情を変えずに小さな声で言った。

「あなた、誰?」


男はようやく口を開いた。


「ボンド。

  ジェームズ・ボンド。」














「いや思いっきり日本人だし。」

「いやこれはあの、違っ」



「ジェームズ・ボンドは来ない」
松岡圭祐著(角川書店)2014.4.2刊 




さて、上記に書いたものはオレのフィクションであり、

これからご紹介する小説とは一切関係ありません(笑)。

本日は、プロが描くステキな1冊をみなさんへおすすめしたい。

みなさんは、「直島(なおしま)」という島はもちろんご存じだろう。

去年もこのブログに書いた、「瀬戸内国際芸術祭」のメイン舞台である。

岡山県玉野市の先、ベネッセがアートの島に仕立て上げた、あの島である。




直島が「007」の舞台!?

「映画化や!ロケ誘致や!」

思いつきも甚だしいこの一言が、ベネッセどころか、北海道、大阪、

やがてハリウッド、世界的企業も巻き込む大騒動になっていく。

直島生まれの峰尾遥香(17)は、

その非現実的ともいえる「夢」に想いを馳せた。


果たして、ジェームズ・ボンドは来るのか―。



この話は、実際に直島で起こった「実話」である。

2001年に「007」の小説作家が直島を訪れることから物語は動き出す。

ひとりの女子高生の目線で描かれた、青春と汗と笑いと涙。

小説化したのは、「万能鑑定士Q」でおなじみの松岡圭祐氏。

多少フィクションを織り交ぜつつ、でも、我が玉野市宇野と香川県直島の関係や、

方言なども実にリアルだ。

しかーし!

いくらアート化したとしても、直島と絶対つながらない「007」。

直島の半分以上は、アートされてない素朴な島。

オレの親父はまだ毎日直島で働いているが、007とか笑止。

「ダブルオーセブン」じゃなく、「ゼロゼロセブン」って呼んどる時点で、終わっとる。

でも!

夢みたっていいじゃない!

じいちゃんもばあちゃんも、少女も青年も!

夢みたっていいじゃない!

やってみんと分からんこともあるんじゃで!




そして!

やっぱりオレは、こういう女の子(峰尾遥香)が好きだなあ!

瀬戸内海はええなあ!



瀬戸内ネバーダイ。




そうだ、直島行こう。


 


                             
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「ハローナウシカ」岡山編。
再開!